2010年12月14日火曜日

流通市場における買手パワー(Buyer Power)の競争への影響について

自分が参加した、公正取引委員会CPRC共同研究報告が公表されました。
小島泰友、渕川和彦「流通市場における買手パワー(Buyer Power)の競争への影響について―大規模小売業者を中心として―」
<本文>
http://www.jftc.go.jp/cprc/reports/cr-0410.pdf

<要約>
http://www.jftc.go.jp/cprc/reports/cr-0410abstract.pdf

買手市場支配力(Buyer Power)の規制について、特に欧州の企業結合規制を検討することで、日本法への示唆を試みています。また、補論にて各国競争法の優越的地位の濫用規制についても整理してあります。経済学者や実務家である公取委の職員の方と議論を重ねて執筆したものですので、是非ご覧ください。

2010年12月10日金曜日

ジョンソン・エンド・ジョンソン事件

公正取引委員会は、平成22年12月1日、ジョンソン・エンド・ジョンソン(以下、「J&J」という)に対して、一日使い捨てコンタクトレンズの広告を通じた価格競争を回避するために、取引先小売業者に対して販売価格の広告を行わせないようににさせている拘束条件付取引を取りやめるよう排除措置命令を行いました。

J&Jは我が国における一日使い捨てコンタクトレンズの販売高について業界第一位であり、小売業者にとって、J&Jと取引することが営業上有利となっています。J&Jは、取引先小売業者に対して製品一覧表に「店頭以外で販売価格表示を行わないでください」と文言を記載し、さらにこれに従わない場合には出荷停止することもあり得る旨の説明を行っていたと認定されています。また、特定の大口取引先小売業者に対しては、リベートの支払いを行う「DDプラン」を行うこととし、DDプランの適用の選定に際し、ダイレクトメールを除く広告において販売価格の表示を行わないように求め、これに従わない場合にはDDプランを適用しないとしました。

公正取引委員会は、J&Jが、一日使い捨てコンタクトレンズについて、取引先小売業者が広告により販売価格を表示すること、また、特定の大口取引小売業者がダイレクトメールを除く広告において販売価格の表示を行うことを制限することは、それぞれ拘束条件付取引(不公正な取引方法12項)に該当し、不公正な取引方法を禁止する独占禁止法19条に違反するとして、独占禁止法20条2項に基づき排除措置命令を行いました。

J&J事件では、自己の供給する商品を購入する相手方に対して、販売価格を記載した広告を禁じることにより価格競争を回避しています。したがって、公取委は、自己の供給する商品を購入する相手方に対して、当該商品の「販売価格定め」る再販売価格維持行為(独禁法2条9項4号イ)として取り扱わなかったようです。このような価格維持のおそれがある拘束条件付取引は、再販売価格維持行為に準じて原則違法とされますが、現独禁法においては課徴金が課されないこととなります(ただし、繰り返して再販売価格維持した場合にのみ課徴金賦課される)。このような、再販売価格維持を目的とした拘束条件付取引に関しては、課徴金が課されないということになってしまうため、「販売価格を定め」るという要件を広く解釈して、本件を再販売価格維持行為として取り扱うことも今後必要となってくるのではないかと思います。