2011年6月26日日曜日

優越的地位の濫用、初の課徴金賦課

公正取引委員会は、平成23年6月22日株式会社山陽マルナカに対して、優越的地位の濫用(独禁法2条9項5号)に該当するとして、独禁法19条に違反するとし、同法20条の6の規定に基づき2億2216万円の課徴金納付命令を行いました。平成21年改正独禁法において優越的地位の濫用に課徴金が課されたのは、本事件が初となります。

違反行為は以下の通りです。山陽マルナカは、平成19年1月以降、納入業者に対して、①新規開店、全面改装、棚替え等に際して、あらかじめ合意することなく従業員派遣をするよう要請し、②「こども将棋大会」、「レディーステニス大会」と称する催事等の費用を確保するため金銭を提供するよう要請し、③季節商品の販売時期の修了に伴う商品の入替えを理由とした割引販売に伴う自社の損失を補てんするために当該商品の仕入れ価格の50%相当額を納入業者に支払うべき代金から減額し、また、全面改装に伴う在庫整理を理由とした割引販売における割引額に相当する額を納入業者に支払うべき代金から減額し、④クリスマス関連商品の販売に際しクリスマス関連商品の目標販売数量を設定し、クリスマス関連商品を購入するよう要請していました。納入業者は山陽マルナカとの取引を継続して行う立場上、その要請及び減額に応じることを余儀なくされました。

山陽マルナカは岡山県において最大手の事業者とされており、岡山県における小売業に係る食品の売上高に占める山陽マルナカの売上高の割合は、小売業者の中で最も高いとされています。優越的地位の濫用ガイドラインでは、公正競争阻害性の中に行為の広がりを考慮するとありますが(優越的地位の濫用ガイドライン第一1)、本件では、行為の広がりについて明確に事実認定しているわけではなく、地位の優越性の事実認定と行為の広がりの分析を同時に行っているのではないかと思います。今後、行為の広がり、伝播性の意義について明らかにする必要があります。

平成21年独禁法改正後の優越的地位の濫用は、法規範としては平成21年改正前と変わらないとする見解が一般的だと思いますが、課徴金が課される現在において、行為の広がり、伝播性が全くない優越的地位の濫用ついても独禁法上違反とすべきかどうかを改めて検討する必要があると思われます。行為の広がり、伝播性が全くない優越的地位の濫用については、私訴において問題となることがあるので、この点については、改めて分析してみたいと思います。

2011年6月1日水曜日

新日鉄と住金が公取委に合併を正式申請

新日鉄と住金が5月31日に公取委に対して正式に合併申請を行いました。海外でも約10カ国の独禁当局に合併審査の申請を行う方針のようです。国内粗鋼生産で1位と3位の当事会社による合併が認められれば、国内シェアが熱延鋼板が49.5%、厚板は45.5%となり、2位のJFEスチール(熱延鋼板36.2%、厚板36.1%)を引き離すことになります。公取委が市場画定をどのように行うのか、そして、海外からの輸入圧力をどのように評価するのかなどが注目されます。

参考新聞記事
http://money.jp.msn.com/newsarticle.aspx?ac=JAPAN-214589&cc=03&nt=00