公正取引委員会は、6月22日、東京電力に対して、自由化対象需要家(50キロワット以上の需要家。例:大規模工場、オフィスビル、中小規模の工場、スーパー等)向け電気料金の引き上げについて、優越的地位の濫用(独禁法2条9項5号)に該当し、不公正な取引方法を禁止する独禁法19条に違反するおそれがあるとして注意を行いました。
自由化対象需要家は、東電との取引関係において、取引の継続が困難になれば事業経営上大きな支障を来たし、東電が著しく不利益な取引条件の提示等を行っても、自由化対象需要家は、これを受け入れざるを得ない状況にあります。したがって、東電は自由化対象需要家との取引関係において、優越的地位にあります。
東電は、あらかじめの合意がないにも拘わらず、①平成24年4月1日以降の使用に係る電気料金引き上げを一斉に行うとし、②自由化対象需要家のうち、500キロワット未満の需要家(中小規模の工場、スーパーなど)に対して、異議の連絡が無い場合には電気料金引き上げの合意があったとみなすとして書面により電気料金引き上げの要請を行いました。
優越的地位にある東電と自由化対象需要家との間の契約に関しては、自由な意思に基づく契約は望めず、代替的な取引先が見いだすことができない自由化対象需要家は、不利な契約条件をのまざるを得ないという状況に立たされています。今回の公取委の東電による法人値上げに関する優越的地位の濫用に対する注意は評価されるべきだと思います。
一方、新聞報道によれば、東電は家庭向けの電気料金の平均10.28%引き上げを経産省に申請しており、経産省の有識者会議「電気料金審査専門委員会」で近々結論が出される予定です。経産省は、電気料金審査専門委員会の結論や、公正取引委員会、消費者委員会、消費者庁の意見を踏まえて、東電に再申請を指示し、東電は家庭向け電気料金の引き上げを8月1日に改めて再申請する見通しのようです(2012年6月20日読売新聞 YOMIURI ONLINE参照)。
公取委は、東電による法人向け電気料金値上げだけでなく、家庭向け電気料金値上げの問題についても、経産省、消費者委員会、消費者庁と一体となって、取り組んで頂きたいものです。