2010年11月30日火曜日

ハマナカ毛糸事件(公正取引721号2010年11月号)

2010年11月号の公正取引(721号)に自分の判例評釈が掲載されました。
渕川和彦「ハマナカ毛糸の再販売価格の拘束」公正取引721号107頁(2010)

従来日本では再販売価格維持行為を原則違法の類型としています。他方、法体系は異なりますが我が国独占禁止法の母法とも言うべき米国反トラスト法では、2007年のLeegin判決において最低価格再販に対する当然違法の原則を覆し、合理の原則による判断を行うとしています。今回のハマナカ毛糸事件はLeegin判決以降の初めての審判審決であったため注目されましたが、改めて公取委は再販売価格維持行為を原則違法の類型であるとしたと解することができます。再販売価格維持行為の効率性による正当化について①二重独占を解消する最高価格再販の場合、②「ただ乗り(free ride)」防止の場合、③顧客へのサービス競争が促進される場合については検討される余地があると思います。ハマナカ毛糸事件ではこれらの再販売価格維持行為の効率性による正当化の余地については触れられていませんが、当該事件では、これらの正当化事由が認められず、反競争的な側面を容易に判断可能な事件であったと考えられます。今後、我が国独禁法において、再販売価格維持行為の正当化の余地について更なる議論が喚起されることが望まれます。また、我が国独禁法における「原則違法」と米国反トラスト法の「当然違法の原則」及び「合理の原則」の概念の異同について改めて検討する必要があるのではないかと思います。

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