この度、公取委競争政策研究センター(CPRC)第28回セミナーで講演することになりました。
ご興味がある方は是非いらしてください。12月5日が参加締切となっております。
<http://www.jftc.go.jp/cprc/seminar/28/notice.html>
【概要】
近年,欧米では,大規模小売業者の合併等による買手パワーの高まりが問題視されており,我が国においても,欧米ほど小売市場の集中度は高くないものの,大規模小売業者の台頭により小規模小売店が減少する等,小売の市場構造は大きく変化している。
買手パワーの増大によって懸念される問題点として,①従来から指摘されている大規模小売業者による納入業者に対する優越的地位の濫用の問題,②大規模小売業者の買手パワーによって生ずるその他の小売業者に与える第三者効果(例えば,買手パワーを通じて,大規模小売業者は納入業者から安値で商品を仕入れることが可能となる一方,その納入業者は当該低価格納入による損失分を補うため,その他の小売業者に対して納入価格を引き上げ,当該小売業者の仕入れコストが上昇するという問題),③買手パワーの増大の結果,中長期的な小売市場の寡占化が進むことによる消費者への影響の3点が挙げられる。
本セミナーにおいては,経済学及び法学の観点から,これらの問題について理解を深めることにより,競争政策上の課題を明らかにする。
1.日時・会場
日時:平成23年12月9日(金)16時から18時
会場:東京都千代田区霞が関1-1-1 中央合同庁舎第6号館B棟公正取引委員会大会議室(庁舎11階)
2.テーマ等
(1)テーマ:「流通市場における買手パワーの競争への影響について」
(2)講師:小島 泰友准 教授(東京農業大学国際食料情報学部准教授)、渕川 和彦(大宮法科大学院大学非常勤講師)
(3)コメンテーター:大久保直樹 教授(CPRC主任研究員、学習院大学法学部教授)、高橋佳生 理事(財団法人流通経済研究所常務理事)
(4)司会・進行:小田切宏之 所長(CPRC所長、成城大学社会イノベーション学部教授)
2011年12月2日金曜日
2011年7月14日木曜日
米国反トラスト法における買手事業者間の共同行為規制―買手独占理論を素材として―
このほど、拙稿「米国反トラスト法における買手事業者間の共同行為規制―買手独占理論を素材として―」法学政治学論究89号25頁(2011)が掲載されました。私の研究テーマである買手独占について共同行為による買手独占について取り扱ったものです。是非ご覧ください。
<要約>
従来、買手間の共同行為が競争法上問題となる事例は必ずしも多くなく、主に売手側の市場支配力が問題とされてきた。しかし、競争水準を超えて価格が引き下げられた場合、供給者は市場から退出せざるを得なくなくなり供給量が減ることにより、中長期的には社会厚生の損失が生じることとなる。これを買手独占と呼ぶ。また、購入カルテルなどの買手間の共同行為により買手独占を生じさせることを共同の買手独占と呼ぶ。
我が国独禁法とは法体系を異にするが、米国反トラスト法においては、買手独占に関する判例・学説が蓄積している。価格協定による買手独占を当然違法としたMandeville事件連邦最高裁判決では、反トラスト法の保護は、売手、買手の区別なく及び、買手間のカルテルについて当然違法であるとした。
1991年にBlair教授とHarrison教授により買手独占理論が体系化され、下級審では買手間の共同行為を買手独占理論に基づき合理の原則で判断した事例が見受けられる。また、連邦最高裁は、単独行為規制に関する2007年Weyerhaeuser事件連邦最高裁判決において、買手独占が売手独占と同様、反トラスト法上問題となることを初めて言及し、Blair教授とHarrison教授の論文を引用している。そこで、消費者を直接的に害しない共同の買手独占をどのように規制すべきかが問題となる。
買手間の共同行為に対しては、当然違法の原則を適用するMandeville事件連邦最高裁判決の基準と、下級審で見受けられる消費者厚生への影響を分析し合理の原則に基づく違法性判断基準が存在する。しかし、買手間のカルテルに当然違法の原則を適用したMandeville事件連邦最高裁判決を覆す連邦最高裁判決は未だ出ていない。従って、現在のところ、売手、買手の区別なく、買手間のカルテルを当然違法としたMandeville判決の先例拘束性が維持されている。
我が国独禁法における買手間の共同行為規制については、まず、共同の買手独占が社会厚生の観点からは競争促進的な側面がある一方で協調行為に繋がり得ること、そして、買手独占理論を根拠とした正当化事由は、行為要件を通じて競争の過程を保護してきた我が国独禁法の体系を損ないかねないことに留意しなければならない。
<要約>
従来、買手間の共同行為が競争法上問題となる事例は必ずしも多くなく、主に売手側の市場支配力が問題とされてきた。しかし、競争水準を超えて価格が引き下げられた場合、供給者は市場から退出せざるを得なくなくなり供給量が減ることにより、中長期的には社会厚生の損失が生じることとなる。これを買手独占と呼ぶ。また、購入カルテルなどの買手間の共同行為により買手独占を生じさせることを共同の買手独占と呼ぶ。
我が国独禁法とは法体系を異にするが、米国反トラスト法においては、買手独占に関する判例・学説が蓄積している。価格協定による買手独占を当然違法としたMandeville事件連邦最高裁判決では、反トラスト法の保護は、売手、買手の区別なく及び、買手間のカルテルについて当然違法であるとした。
1991年にBlair教授とHarrison教授により買手独占理論が体系化され、下級審では買手間の共同行為を買手独占理論に基づき合理の原則で判断した事例が見受けられる。また、連邦最高裁は、単独行為規制に関する2007年Weyerhaeuser事件連邦最高裁判決において、買手独占が売手独占と同様、反トラスト法上問題となることを初めて言及し、Blair教授とHarrison教授の論文を引用している。そこで、消費者を直接的に害しない共同の買手独占をどのように規制すべきかが問題となる。
買手間の共同行為に対しては、当然違法の原則を適用するMandeville事件連邦最高裁判決の基準と、下級審で見受けられる消費者厚生への影響を分析し合理の原則に基づく違法性判断基準が存在する。しかし、買手間のカルテルに当然違法の原則を適用したMandeville事件連邦最高裁判決を覆す連邦最高裁判決は未だ出ていない。従って、現在のところ、売手、買手の区別なく、買手間のカルテルを当然違法としたMandeville判決の先例拘束性が維持されている。
我が国独禁法における買手間の共同行為規制については、まず、共同の買手独占が社会厚生の観点からは競争促進的な側面がある一方で協調行為に繋がり得ること、そして、買手独占理論を根拠とした正当化事由は、行為要件を通じて競争の過程を保護してきた我が国独禁法の体系を損ないかねないことに留意しなければならない。
企業結合ガイドラインの一部改正について
公正取引委員会は2011年6月14日、新たな企業結合ガイドラインを公表した。改正の主なポイントは、①事前相談制度の廃止、②審査期間の短縮、③世界(又は東アジア)市場の画定の考え方の明確化にある。
事前相談制度に関しては、従来から非公式な手続きであり手続きの透明性を欠く、審査にかかる時間の見通しがつきにくいなどの批判があった。公取委は、これらの批判に対応し事前相談制度を廃止したものと考えられる(但し、届出予定会社が届出書に記載すべき内容に関連した相談を公正取引委員会に行なった場合には、届出前相談(任意)として説明を行なうとしている)。
世界(又は東アジア)市場については、「ある商品について、内外の需要者が内外の供給者を差別することなく取引しているような場合には、日本において価格が引き上げられたとしても、日本の需要者が、海外の供給者にも当該商品の購入を代替し得るために、日本における価格引上げが妨げられることがあり得るので、このような場合には、国境を越えて地理的範囲が画定されることとなる。例えば、内外の主要な供給者が世界(又は東アジア)中の販売地域において実質的に同等の価格で販売しており、需要者が世界(又は東アジア)各地の供給者から主要な調達先を選定しているような場合は、世界(又は東アジア)市場が画定され得る」としている(企業結合ガイドライン第2・3(2))。
事前相談制度に関しては、従来から非公式な手続きであり手続きの透明性を欠く、審査にかかる時間の見通しがつきにくいなどの批判があった。公取委は、これらの批判に対応し事前相談制度を廃止したものと考えられる(但し、届出予定会社が届出書に記載すべき内容に関連した相談を公正取引委員会に行なった場合には、届出前相談(任意)として説明を行なうとしている)。
世界(又は東アジア)市場については、「ある商品について、内外の需要者が内外の供給者を差別することなく取引しているような場合には、日本において価格が引き上げられたとしても、日本の需要者が、海外の供給者にも当該商品の購入を代替し得るために、日本における価格引上げが妨げられることがあり得るので、このような場合には、国境を越えて地理的範囲が画定されることとなる。例えば、内外の主要な供給者が世界(又は東アジア)中の販売地域において実質的に同等の価格で販売しており、需要者が世界(又は東アジア)各地の供給者から主要な調達先を選定しているような場合は、世界(又は東アジア)市場が画定され得る」としている(企業結合ガイドライン第2・3(2))。
2011年6月26日日曜日
優越的地位の濫用、初の課徴金賦課
公正取引委員会は、平成23年6月22日株式会社山陽マルナカに対して、優越的地位の濫用(独禁法2条9項5号)に該当するとして、独禁法19条に違反するとし、同法20条の6の規定に基づき2億2216万円の課徴金納付命令を行いました。平成21年改正独禁法において優越的地位の濫用に課徴金が課されたのは、本事件が初となります。
違反行為は以下の通りです。山陽マルナカは、平成19年1月以降、納入業者に対して、①新規開店、全面改装、棚替え等に際して、あらかじめ合意することなく従業員派遣をするよう要請し、②「こども将棋大会」、「レディーステニス大会」と称する催事等の費用を確保するため金銭を提供するよう要請し、③季節商品の販売時期の修了に伴う商品の入替えを理由とした割引販売に伴う自社の損失を補てんするために当該商品の仕入れ価格の50%相当額を納入業者に支払うべき代金から減額し、また、全面改装に伴う在庫整理を理由とした割引販売における割引額に相当する額を納入業者に支払うべき代金から減額し、④クリスマス関連商品の販売に際しクリスマス関連商品の目標販売数量を設定し、クリスマス関連商品を購入するよう要請していました。納入業者は山陽マルナカとの取引を継続して行う立場上、その要請及び減額に応じることを余儀なくされました。
山陽マルナカは岡山県において最大手の事業者とされており、岡山県における小売業に係る食品の売上高に占める山陽マルナカの売上高の割合は、小売業者の中で最も高いとされています。優越的地位の濫用ガイドラインでは、公正競争阻害性の中に行為の広がりを考慮するとありますが(優越的地位の濫用ガイドライン第一1)、本件では、行為の広がりについて明確に事実認定しているわけではなく、地位の優越性の事実認定と行為の広がりの分析を同時に行っているのではないかと思います。今後、行為の広がり、伝播性の意義について明らかにする必要があります。
平成21年独禁法改正後の優越的地位の濫用は、法規範としては平成21年改正前と変わらないとする見解が一般的だと思いますが、課徴金が課される現在において、行為の広がり、伝播性が全くない優越的地位の濫用ついても独禁法上違反とすべきかどうかを改めて検討する必要があると思われます。行為の広がり、伝播性が全くない優越的地位の濫用については、私訴において問題となることがあるので、この点については、改めて分析してみたいと思います。
違反行為は以下の通りです。山陽マルナカは、平成19年1月以降、納入業者に対して、①新規開店、全面改装、棚替え等に際して、あらかじめ合意することなく従業員派遣をするよう要請し、②「こども将棋大会」、「レディーステニス大会」と称する催事等の費用を確保するため金銭を提供するよう要請し、③季節商品の販売時期の修了に伴う商品の入替えを理由とした割引販売に伴う自社の損失を補てんするために当該商品の仕入れ価格の50%相当額を納入業者に支払うべき代金から減額し、また、全面改装に伴う在庫整理を理由とした割引販売における割引額に相当する額を納入業者に支払うべき代金から減額し、④クリスマス関連商品の販売に際しクリスマス関連商品の目標販売数量を設定し、クリスマス関連商品を購入するよう要請していました。納入業者は山陽マルナカとの取引を継続して行う立場上、その要請及び減額に応じることを余儀なくされました。
山陽マルナカは岡山県において最大手の事業者とされており、岡山県における小売業に係る食品の売上高に占める山陽マルナカの売上高の割合は、小売業者の中で最も高いとされています。優越的地位の濫用ガイドラインでは、公正競争阻害性の中に行為の広がりを考慮するとありますが(優越的地位の濫用ガイドライン第一1)、本件では、行為の広がりについて明確に事実認定しているわけではなく、地位の優越性の事実認定と行為の広がりの分析を同時に行っているのではないかと思います。今後、行為の広がり、伝播性の意義について明らかにする必要があります。
平成21年独禁法改正後の優越的地位の濫用は、法規範としては平成21年改正前と変わらないとする見解が一般的だと思いますが、課徴金が課される現在において、行為の広がり、伝播性が全くない優越的地位の濫用ついても独禁法上違反とすべきかどうかを改めて検討する必要があると思われます。行為の広がり、伝播性が全くない優越的地位の濫用については、私訴において問題となることがあるので、この点については、改めて分析してみたいと思います。
2011年6月1日水曜日
新日鉄と住金が公取委に合併を正式申請
新日鉄と住金が5月31日に公取委に対して正式に合併申請を行いました。海外でも約10カ国の独禁当局に合併審査の申請を行う方針のようです。国内粗鋼生産で1位と3位の当事会社による合併が認められれば、国内シェアが熱延鋼板が49.5%、厚板は45.5%となり、2位のJFEスチール(熱延鋼板36.2%、厚板36.1%)を引き離すことになります。公取委が市場画定をどのように行うのか、そして、海外からの輸入圧力をどのように評価するのかなどが注目されます。
参考新聞記事
http://money.jp.msn.com/newsarticle.aspx?ac=JAPAN-214589&cc=03&nt=00
参考新聞記事
http://money.jp.msn.com/newsarticle.aspx?ac=JAPAN-214589&cc=03&nt=00
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