2012年2月15日水曜日

JASRAQの私的独占違反の排除措置命令取り消し

音楽使用料の包括徴収に関して公正取引委員会は私的独占違反の排除措置命令を出していたが、公取委は当該排除措置命令を取り消す旨の審決案をJASRAQに送ったようです。公取委は、放送局が事業収入の1.5%を支払えばJASRAQの管理楽曲を使用できる「包括的利用許諾契約」が管理楽曲の放送比率に反映されていないため、新規事業者の参入を阻害するため、放送比率に応じた使用料の仕組みを作ることを求める排除措置を命じていた。JASRAQ側によると、新規業者が管理する歌手大塚愛さんの楽曲「恋愛写真」の場合、06年10月中に少なくとも515回、10月から12月までの3カ月間では少なくとも729回放送されていたようです。審決が確定すれば1994年のエレベータ保守業者の事件から18年ぶりに違反認定した事件を審判で無罪とすることになります。
2012年2月3日日本経済新聞朝刊34頁参照

東京証券取引所と大阪証券取引所の経営統合、2次審査入り

公正取引委員会は、2月3日、東京証券取引所と大阪証券取引所の経営統合の2次審査に張ったようです。90日以内に公取委は経営統合の是非の最終判断を行います。両社の主な事業として「有価証券の上場に関する役務」や「相場情報などの提供に関する役務」など5分野が挙げられており、これらの市場において競争を実質的に制限することとなるかが判断されるようです。
2012年2月3日、日経新聞夕刊3頁参照

国際航空貨物利用運送業務運賃カルテル事件

ジュリスト2月号(1437号)に私の判例評釈が掲載されました。
渕川和彦「国際航空貨物利用運送業務運賃カルテル事件」『ジュリスト』1437号、2012年、88‐91頁

国際航空貨物利用運送業務(以下、本件業務)を行う事業者、通称フォワァーダーである西日本鉄道株式会社ほか2社が本件業務に関する料金についてカルテルを行ったものです。本件の特徴は、本件違反行為を、共同して本件合意により本件業務の取引分野における競争を実質的に制限することとしながら、本件合意の範囲を4料金に限定し、課徴金算定の対象をこの4料金の売上額としている点にあります。本件では、14社は、繰り返し国際部会役員会の会合を開催し、本来であれば、競争相手に対して秘密にするはずの、自社の取引先との交渉内容、交渉経過等の情報を披れきし合い、取引先に対する競合他社の行動についての情報を入手してその動向を把握していていました。航空運賃の部分については、その額を転嫁せずに各社が混載(到着地が同一の貨物をまとめること)によって調整することが可能でした。燃油サーチャージに関しては、他社の過去の行動を把握し、将来の行動を予測した上で、自社の行動を決定することができたものと推認されており、各社とも取引先に対して同一の行動を取っていた。さらに、公取委は、4料金を競争の手段として荷主と交渉し、他社から顧客を奪おうとしたり、従前と比較して取引量を増やそうとしたりした具体的事例がうかがえないという事後の行動の一致を認定しています。以上の認定事実からすれば、本件合意を単に4料金について行なわれたとみるのは経験則に反し、本件業務の運賃及び料金全体について行なわれたとみるのが妥当である。14社の本件業務の取引分野における協調的行動に関する「意思の連絡」を推認するべきであったと考えられます。

なお、欧米競争当局は、航空会社間の国際航空運賃及び燃料サーチャージの価格カルテルを規制していますが、日本の公取委は、航空会社間の国際航空運賃及び燃油サーチャージの価格カルテルについては、現在のところ規制していません。他方、本件業務に関しては、航空法のような独禁法上の適用除外規定は存在せず、独禁法が直接適用されることとなります。
本件被審人らによる燃油サーチャージ等に係る価格カルテルについては、本審決のほか、日新課徴金事件審判審決平23・5・10審決集未登載、郵船ロジスティクス課徴金事件審判審決平23・7・6審決集未登載などがあります。また、米国司法省も同一事件の規制を行っており、2011年9月30日に13社が総額1億ドルの罰金を支払うことで司法取引に合意しています。