2012年2月15日水曜日

国際航空貨物利用運送業務運賃カルテル事件

ジュリスト2月号(1437号)に私の判例評釈が掲載されました。
渕川和彦「国際航空貨物利用運送業務運賃カルテル事件」『ジュリスト』1437号、2012年、88‐91頁

国際航空貨物利用運送業務(以下、本件業務)を行う事業者、通称フォワァーダーである西日本鉄道株式会社ほか2社が本件業務に関する料金についてカルテルを行ったものです。本件の特徴は、本件違反行為を、共同して本件合意により本件業務の取引分野における競争を実質的に制限することとしながら、本件合意の範囲を4料金に限定し、課徴金算定の対象をこの4料金の売上額としている点にあります。本件では、14社は、繰り返し国際部会役員会の会合を開催し、本来であれば、競争相手に対して秘密にするはずの、自社の取引先との交渉内容、交渉経過等の情報を披れきし合い、取引先に対する競合他社の行動についての情報を入手してその動向を把握していていました。航空運賃の部分については、その額を転嫁せずに各社が混載(到着地が同一の貨物をまとめること)によって調整することが可能でした。燃油サーチャージに関しては、他社の過去の行動を把握し、将来の行動を予測した上で、自社の行動を決定することができたものと推認されており、各社とも取引先に対して同一の行動を取っていた。さらに、公取委は、4料金を競争の手段として荷主と交渉し、他社から顧客を奪おうとしたり、従前と比較して取引量を増やそうとしたりした具体的事例がうかがえないという事後の行動の一致を認定しています。以上の認定事実からすれば、本件合意を単に4料金について行なわれたとみるのは経験則に反し、本件業務の運賃及び料金全体について行なわれたとみるのが妥当である。14社の本件業務の取引分野における協調的行動に関する「意思の連絡」を推認するべきであったと考えられます。

なお、欧米競争当局は、航空会社間の国際航空運賃及び燃料サーチャージの価格カルテルを規制していますが、日本の公取委は、航空会社間の国際航空運賃及び燃油サーチャージの価格カルテルについては、現在のところ規制していません。他方、本件業務に関しては、航空法のような独禁法上の適用除外規定は存在せず、独禁法が直接適用されることとなります。
本件被審人らによる燃油サーチャージ等に係る価格カルテルについては、本審決のほか、日新課徴金事件審判審決平23・5・10審決集未登載、郵船ロジスティクス課徴金事件審判審決平23・7・6審決集未登載などがあります。また、米国司法省も同一事件の規制を行っており、2011年9月30日に13社が総額1億ドルの罰金を支払うことで司法取引に合意しています。

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