2012年3月28日水曜日

米国反トラスト法における買手事業者間の共同行為規制

このほど、拙稿「米国反トラスト法における買手事業者間の共同行為規制―買手独占理論を素材として―」が競争政策研究センターのディスカッション・ペーパーとして公正取引委員会のHPに掲載されました。法学政治学論究89号25頁(2011)を加筆修正したものです。是非ご覧ください。

「米国反トラスト法における買手事業者間の共同行為規制-買手独占理論を素材として-」CPDP55-J(2012.3)
http://www.jftc.go.jp/cprc/DP/CPDP-55-J.pdf

<概要>
 従来,買手の市場支配力が競争法上問題となる事例は必ずしも多くなく,主に売手側の市場支配力が問題とされてきた。しかし,強力な買手(例えば大規模小売業)の出現により,競争法は買手独占への理論的対応を迫られている。買手独占とは,買手により競争水準以下に価格が引き下げられた場合,供給量が減ることで社会厚生の損失が生じることを指す。また,買手間の共同行為により買手独占が生じることを共同の買手独占と呼ぶ。
 この点,米国反トラスト法では,1948年Mandeville判決において,反トラスト法の保護は,売手,買手の区別なく及ぶと判示したことにより,買手間のカルテルは,売手間のカルテル同様,当然違法であると解されている。しかし,1991年にBlair教授とHarrison教授により買手独占理論が体系化された後,下級審では買手間の共同行為を買手独占理論に言及しながら合理の原則で判断した事例が見受けられる。ただし,現在のところ Mandeville判決は先例拘束力を有している。
 我が国独占禁止法における買手間の共同行為の不当な取引制限該当性を検討する上で,まず,共同の買手独占が社会厚生の観点からは競争促進的な側面がある一方で協調行為につながり得ること,そして,買手独占理論を根拠とした正当化事由は,行為要件を通じて競争の過程を保護してきた我が国独占禁止法の体系を損ないかねないことに留意しなければならない。

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