オリエンタル白石事件審決取消訴訟(東京高判平25・5・17)
会社更生法による更生計画認可により、課徴金債権が免責された事件です。
プレストレスト・コンクリート工事として発注する橋梁の新設工事の入札談合に関するものですが、
違反事業者のオリエンタル白石は、平成20年12月31日に会社更生法41条に基づく更生手続開始を行い、その後平成23年6月15日に課徴金納付命令、同年10月24日に会社更生法239条に基づき更生手続終結の決定がされております。
その後、平成24年9月25日に課徴金納付を命ずる審決が出たため、
オリエンタル白石は、課徴金を納付したうえで、
平成24年10月17日審決取り消し訴訟を提起しております。
最終的に東京高裁は、課徴金債権は租税等の請求権に該当するとして、
罰金等の請求権に定められた免責の例外規定を類推適用して、
更生計画認可決定によっても免責されないとすることは許されないとして、
課徴金債権を免責しました。
これを受け、平成25年6月4日に、公取委は、
1日分の利息分も含め、5億3737万3602円を返還しています。
現行法上、確かに明文の規定がない限り法解釈上厳しいかもしれませんが
(ここはもう少し詰めたいと思います)、課徴金納付を免れる手段として悪用されないように、
今後、立法も含めて考えなければならない問題のように思われます。
2013年11月29日金曜日
2013年7月19日金曜日
パナと三洋に罰金57億円
米国司法省は7月18日、パナソニックとその子会社である三洋にたいして、約57億円の罰金の支払うことに合意したとの発表をしました。
報道によれば、パナソニックは自動車部品のスイッチ類の部品に関する価格協定について、三洋はノートブックパソコンに用いられる、リチウムイオン電池に関してLGと行った価格協定について、それぞれ違反を認めたようです。
主に米国で販売される自動車用部品のスイッチについては、トヨタ、ホンダ、マツダ、ニッサンが購入していたようです(現地法人を含む)。
日本の会社のカルテルにより、現地法人を含む日本自動車メーカーが被害を被り、それを米国競争当局が取り締まっているという少し変わった構図になっています。
日本の会社に対する米国独占禁止法(シャーマン法1条)の適用ですが、現地法人はいいとして、日本を拠点とする日本自動車メーカーに対するカルテルは本来であれば公取委が取り締まるべきとも思われます。
最終的に消費者が公正な価格で自動車が購入できるようになるというのであれば良いのではないかと思いますが、くわしく見ると論点が多く含まれていそうです。DOJのプレスリリースには、詳細な事実が書かれていないので残念です。
DOJのプレスリリースをみる限り、リニエンシーがされたかどうかについては不明でしたが、これから情報が出てくるかもしれませんね。
報道によれば、パナソニックは自動車部品のスイッチ類の部品に関する価格協定について、三洋はノートブックパソコンに用いられる、リチウムイオン電池に関してLGと行った価格協定について、それぞれ違反を認めたようです。
主に米国で販売される自動車用部品のスイッチについては、トヨタ、ホンダ、マツダ、ニッサンが購入していたようです(現地法人を含む)。
日本の会社のカルテルにより、現地法人を含む日本自動車メーカーが被害を被り、それを米国競争当局が取り締まっているという少し変わった構図になっています。
日本の会社に対する米国独占禁止法(シャーマン法1条)の適用ですが、現地法人はいいとして、日本を拠点とする日本自動車メーカーに対するカルテルは本来であれば公取委が取り締まるべきとも思われます。
最終的に消費者が公正な価格で自動車が購入できるようになるというのであれば良いのではないかと思いますが、くわしく見ると論点が多く含まれていそうです。DOJのプレスリリースには、詳細な事実が書かれていないので残念です。
DOJのプレスリリースをみる限り、リニエンシーがされたかどうかについては不明でしたが、これから情報が出てくるかもしれませんね。
2013年4月5日金曜日
米国反トラスト法における買手市場支配力規制―企業結合規制を中心として
このほど、拙稿「米国反トラスト法における買手市場支配力規制-企業結合規制を中心として」法学政治学論究95号、1‐34頁(2012)が掲載されました。私の研究テーマである買手市場支配力の企業結合規制について取り扱ったものです。是非コメント等頂ければ幸いです。よろしくお願いいたします。
<要約>
従来、競争法は、市場への反競争効果に対する規制という観点からみると、製造業者を代表とした、主に売手の行為に着目した規制を行なってきた。しかしながら、昨今の大規模小売業者の台頭に伴い、供給業者対して交渉力を有する小売業者の存在は、競争法上の新たな課題を生じさせている。そして、大規模小売業者のような交渉力を有する買手に関する規制を検討する上で、買手市場支配力が注目されている。
この点、買手市場における寡占化の問題を抱える国の一つであり、我が国独禁法の母法ともいうべき米国反トラスト法では、買手市場支配力に関する企業結合規制について、判例の蓄積が見られる 。米国反トラスト法では、買手市場支配力の議論の進展により、判例法や競争当局の水平合併ガイドラインを通じて買手市場支配力規制がおこなわれているが、それと同時に課題にも直面している。
買手市場支配力の推定方法について、市場支配力の推定については、買手に対しては相対的に低い市場シェアにより市場支配力を推定し得るとの見解があるが、最高裁や競争当局は、売手と買手の区別なく対称的な取扱いをし、売手の市場支配力の推定と同種の基準を用いるとしている。その一方で、Staples事件のように、「価格証拠」を用いて市場画定の段階で、ローカルや特定の市場に狭く画定し、市場シェアを高く認定する場合が見られる。しかし、Staples事件のように必ずしも「価格証拠」が得られる訳ではないため、買手市場支配力の立証が困難となる。
また、買手の市場支配力の認定に際して、消費者への影響がある場合にのみ規制すべきかについて、見解が分かれている。上流市場において買手独占者である買手が、同時に下流市場で売手でもある場合、下流市場でも市場支配力を有する場合は、社会厚生の損失は、単なる買手独占の場合よりも大きい。しかし、単に上流市場で買手独占である場合でも社会厚生の損失は生じるのであるから、買手市場支配力の認定に際して、消費者へ影響を与えるものに限定しないことが妥当だと思われる。
双方独占や拮抗力については、賛否両論がある中で、有力な買手事業者の抗弁をどのような場合に認めるべきか、そして、効率性の抗弁との異同を明らかにする必要もある。この点2010年水平企業結合ガイドラインによれば、効率性とは別に、有力な買手事業者の抗弁に言及しており、企業結合当事者の価格の引き上げの能力を制限する場合として、(1)上流市場を垂直統合する能力がある場合、(2)新規参入を後押しする能力とインセンティブを有する場合、(3)大規模な買手の行為または存在が協調効果を弱める場合が挙げられている。有力な買手事業者に関連して、我が国独禁法では、需要者の競争圧力として言及されているが、学説・判例の蓄積が少ない我が国独禁法の企業結合規制に一定の示唆があるものと考える。
<要約>
従来、競争法は、市場への反競争効果に対する規制という観点からみると、製造業者を代表とした、主に売手の行為に着目した規制を行なってきた。しかしながら、昨今の大規模小売業者の台頭に伴い、供給業者対して交渉力を有する小売業者の存在は、競争法上の新たな課題を生じさせている。そして、大規模小売業者のような交渉力を有する買手に関する規制を検討する上で、買手市場支配力が注目されている。
この点、買手市場における寡占化の問題を抱える国の一つであり、我が国独禁法の母法ともいうべき米国反トラスト法では、買手市場支配力に関する企業結合規制について、判例の蓄積が見られる 。米国反トラスト法では、買手市場支配力の議論の進展により、判例法や競争当局の水平合併ガイドラインを通じて買手市場支配力規制がおこなわれているが、それと同時に課題にも直面している。
買手市場支配力の推定方法について、市場支配力の推定については、買手に対しては相対的に低い市場シェアにより市場支配力を推定し得るとの見解があるが、最高裁や競争当局は、売手と買手の区別なく対称的な取扱いをし、売手の市場支配力の推定と同種の基準を用いるとしている。その一方で、Staples事件のように、「価格証拠」を用いて市場画定の段階で、ローカルや特定の市場に狭く画定し、市場シェアを高く認定する場合が見られる。しかし、Staples事件のように必ずしも「価格証拠」が得られる訳ではないため、買手市場支配力の立証が困難となる。
また、買手の市場支配力の認定に際して、消費者への影響がある場合にのみ規制すべきかについて、見解が分かれている。上流市場において買手独占者である買手が、同時に下流市場で売手でもある場合、下流市場でも市場支配力を有する場合は、社会厚生の損失は、単なる買手独占の場合よりも大きい。しかし、単に上流市場で買手独占である場合でも社会厚生の損失は生じるのであるから、買手市場支配力の認定に際して、消費者へ影響を与えるものに限定しないことが妥当だと思われる。
双方独占や拮抗力については、賛否両論がある中で、有力な買手事業者の抗弁をどのような場合に認めるべきか、そして、効率性の抗弁との異同を明らかにする必要もある。この点2010年水平企業結合ガイドラインによれば、効率性とは別に、有力な買手事業者の抗弁に言及しており、企業結合当事者の価格の引き上げの能力を制限する場合として、(1)上流市場を垂直統合する能力がある場合、(2)新規参入を後押しする能力とインセンティブを有する場合、(3)大規模な買手の行為または存在が協調効果を弱める場合が挙げられている。有力な買手事業者に関連して、我が国独禁法では、需要者の競争圧力として言及されているが、学説・判例の蓄積が少ない我が国独禁法の企業結合規制に一定の示唆があるものと考える。
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