米マイクロソフトだけでなく、楽天も違反事実の報告を行ったようです(独禁法45条1項)。今回シェアが9割を超えると報道されていますが、シェアはパソコンからの検索回数を用いて算出しているようですが、今回問題となっている市場が、広告掲載にかかわる取引であることを考えれば、パソコンからの検索回数だけでみたシェアは正確ではないでしょう。ただし、検索エンジン自体は消費者と事業者を繋ぐプラットフォームの役割を果たしているので、検索回数が無関係という訳ではありません。検索エンジンの技術提携が広告掲載にかかわる取引へどの程度影響があるのかについて、公取委の判断が注目されます。
asahi.com (2010年10月20日)
「グーグルとヤフー提携、楽天が待った『独禁法に違反』」
http://www.asahi.com/digital/internet/TKY201010190478.html
「ネット検索世界最大手の米グーグルが、日本のヤフーに検索技術などを提供する提携をめぐり、ネット商店街最大手の楽天が「実現すれば、グーグルの支配力が強まり、独占禁止法に違反する」として、同法に基づき、公正取引委員会に調査を求める手続きをとったことが19日わかった。米マイクロソフト(MS)も公取委に同様の申告をしており、有力なネット企業4社が日本国内で対立する構図となった。」
2010年10月21日木曜日
2010年10月19日火曜日
リオ・ティントとBHPビリトン、統合を断念
リオ・ティントとBHPビリトンは統合は結局統合を断念したようです。日韓だけでなく、ドイツの当局も事業統合に反対の意を示していたとのことです。
時事通信社(2010/10/18-10:40)
「鉄鉱石事業統合を断念=独禁当局の難色受け-リオとBHP」
http://www.jiji.com/jc/zc?key=%a5%ea%a5%aa&k=201010/2010101800030
【シドニー時事】「英豪系資源大手リオ・ティントとBHPビリトンは18日、両社が進めていたオーストラリア西部の鉄鉱石生産事業を統合する計画を断念したと発表した。日本や欧州などの独禁当局から計画の承認が得られない見通しであることが明らかになったため。両社の価格支配力が強まるとの鉄鋼業界の懸念はひとまず払しょくされた形。」
時事通信社(2010/10/18-10:40)
「鉄鉱石事業統合を断念=独禁当局の難色受け-リオとBHP」
http://www.jiji.com/jc/zc?key=%a5%ea%a5%aa&k=201010/2010101800030
【シドニー時事】「英豪系資源大手リオ・ティントとBHPビリトンは18日、両社が進めていたオーストラリア西部の鉄鉱石生産事業を統合する計画を断念したと発表した。日本や欧州などの独禁当局から計画の承認が得られない見通しであることが明らかになったため。両社の価格支配力が強まるとの鉄鋼業界の懸念はひとまず払しょくされた形。」
2010年10月15日金曜日
BHP/リオティントの合併計画はどうなるのか?
公取委の松山総長がBHP/リオティントの合併について独禁法違反のおそれがあると指摘していたことを明らかにしました。韓国の競争当局も同様の見解なので、合併計画は破談になる可能性が高いようです。
産経新聞 2010.10.13 15:15
「独禁法違反「なるべく早く判断」 公取委が資源大手の事業統合で」
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/101013/fnc1010131446015-n1.htm?utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter
「公正取引委員会の松山隆英事務総長は13日、英豪資源大手で鉄鉱石世界2位のリオ・ティントと3位のBHPビリトンに対し、9月下旬に鉄鉱石生産事業の統合計画が独占禁止法違反の恐れがあると指摘していたことを明らかにした。松山事務総長は両社への指摘について「最終判断ではない」とした上で「なるべく早く最終判断をしたい」と述べた。」
産経新聞 2010.10.13 15:15
「独禁法違反「なるべく早く判断」 公取委が資源大手の事業統合で」
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/101013/fnc1010131446015-n1.htm?utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter
「公正取引委員会の松山隆英事務総長は13日、英豪資源大手で鉄鉱石世界2位のリオ・ティントと3位のBHPビリトンに対し、9月下旬に鉄鉱石生産事業の統合計画が独占禁止法違反の恐れがあると指摘していたことを明らかにした。松山事務総長は両社への指摘について「最終判断ではない」とした上で「なるべく早く最終判断をしたい」と述べた。」
公取委の日本トイザらスへの立ち入りの背景事情
公取委の日本トイザらスへの立ち入り調査の背景事情等を紹介した産経新聞のサイトを見つけたので、ご紹介します。
記事によれば、日本トイザらスの21年1月期決算の有価証券報告書を見ると、同社の売上高は前年比5・8%減の1801億2400万円で、特にゲーム機とおもちゃの売り上げが落ちていたようです。それにも拘わらず、売上利益率は上昇していたとのことです。売上高の減少を買いたたきによる経費削減で補てんしていたようです。優越的地位の濫用に対する課徴金賦課の初めての事例となるかが注目されます。
産経新聞 2010.10.11 19:00
「【疑惑の濁流】値引き強制、不当返品…日本トイザらスの“取引先いじめ”にメス 急成長の裏に何が… 」
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/101011/crm1010111901013-n1.htm
「トイザらス相模原店 運営母体であるトイザラス(米国)が日本マクドナルドと合弁し、日本に上陸して以来、豊富な品ぞろえでたちまち日本一の玩具チェーンに躍り出た「日本トイザらス」(川崎市)。ところが先月、納入業者に値引きを事実上強制するなどした独占禁止法違反(不公正な取引方法)の疑いで公正取引委員会の立ち入り検査が入った。“取引先いじめ”ともいえる行為に、関係者は「氷山の一角で、大手チェーンは多かれ少なかれやっている商慣習。これを機に業界で考えていく問題では…」と話している。(三枝玄太郎)」
記事によれば、日本トイザらスの21年1月期決算の有価証券報告書を見ると、同社の売上高は前年比5・8%減の1801億2400万円で、特にゲーム機とおもちゃの売り上げが落ちていたようです。それにも拘わらず、売上利益率は上昇していたとのことです。売上高の減少を買いたたきによる経費削減で補てんしていたようです。優越的地位の濫用に対する課徴金賦課の初めての事例となるかが注目されます。
産経新聞 2010.10.11 19:00
「【疑惑の濁流】値引き強制、不当返品…日本トイザらスの“取引先いじめ”にメス 急成長の裏に何が… 」
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/101011/crm1010111901013-n1.htm
「トイザらス相模原店 運営母体であるトイザラス(米国)が日本マクドナルドと合弁し、日本に上陸して以来、豊富な品ぞろえでたちまち日本一の玩具チェーンに躍り出た「日本トイザらス」(川崎市)。ところが先月、納入業者に値引きを事実上強制するなどした独占禁止法違反(不公正な取引方法)の疑いで公正取引委員会の立ち入り検査が入った。“取引先いじめ”ともいえる行為に、関係者は「氷山の一角で、大手チェーンは多かれ少なかれやっている商慣習。これを機に業界で考えていく問題では…」と話している。(三枝玄太郎)」
2010年10月10日日曜日
大型店出店の規制強化について
経済産業相が「さらなる大型店の展開によって地域社会の秩序に支障が生じる」と述べ、「規制を強化することが必要だ」としております。競争政策というよりも中小企業保護の色彩が強いもので、「競争」というより「競争者」を保護するものです。大規模小売店だから規制するというのではなく、小売業において公正かつ自由な競争が行われる基盤を整えていくことこそが大切なのではないかと思います。
「大型店出店の規制強化検討=地域社会の秩序に支障-経産相」(時事通信2010/10/07)
<http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2010100700296>
「大畠章宏経済産業相は7日午前、大規模小売店の出店で地域の商店街が衰退している問題に関して「さらなる大型店の展開によって地域社会の秩序に支障が生じる」との認識を示した。その上で「規制を強化することが必要だ」と述べ、大規模小売店の出店規制強化を検討する考えを明らかにした。」
「大型店出店の規制強化検討=地域社会の秩序に支障-経産相」(時事通信2010/10/07)
<http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2010100700296>
「大畠章宏経済産業相は7日午前、大規模小売店の出店で地域の商店街が衰退している問題に関して「さらなる大型店の展開によって地域社会の秩序に支障が生じる」との認識を示した。その上で「規制を強化することが必要だ」と述べ、大規模小売店の出店規制強化を検討する考えを明らかにした。」
2010年10月7日木曜日
米国反トラスト法における略奪的高価購入(Predatory Bidding)規制
慶應大学の「法学政治学論究」に自分の論文が掲載されました。
渕川和彦「米国反トラスト法における略奪的高価購入(Predatory Bidding)規制」法学政治学論究86号35-67頁(2010)
<要約>
従来、我が国の独占禁止法(以下、「独禁法」)では、買手の行為に対して必ずしも積極的に規制を行ってこなかった。しかしながら、平成17年の独禁法改正において購入カルテルについても課徴金が課されることとなり、買手の行為に対する規制への関心が高まりつつある。しかしながら、我が国独禁法では、支配型・排除型を問わず、買手が私的独占を行った場合に課徴金の対象とならない点を問題として指摘することができる。
この点、米国では、原材料となる原木の買占めによる競合会社の排除が問題となった、2007年のWeyerhaeuser事件がある。連邦最高裁は、売手側の独占と買手側の独占との理論上の類似性を指摘し、略奪的価格設定のBrooke判決の2段階の基準を略奪的高価購入に対しても応用して判決を下した。連邦最高裁は、まず、①略奪者である買手の高価購入により生じた生産品のコストが、生産品の販売で生じた収益を上回ることを生じ、次に、②独占力の行使を通じて、原材料価格を吊り上げた際に被った損失を埋め合わせる、合理的な見通しを有することを証明しなければならないとした。
Weyerhaeuser事件では、生産品である製材のコストを基準とした。本件で問題となった生産品の製材は、原材料が7割の価格を占めるという特殊な事情もあった。生産品の価格のコスト基準については、傾聴に値するが、慎重な対応が必要と考える。Weyerhaeuser事件は、買手独占が競争法上の問題となることを明らかにし、Brooke判決基準を略奪的高価格購入に適用している点で意義がある。しかしながら、Brooke判決基準同様、原告に厳しい立証責任を課しており、また、生産品のコスト基準、違法性判断基準の不統一など課題が多い。
Weyerhaeuser事件のような略奪的高価購入の問題は、我が国独禁法では、一般指定7項の不当高価購入、あるいは独禁法2条5項の私的独占に該当する行為と考えられる。特に、一般指定7項の不当高価購入については、運用例がなく、学説上も議論の蓄積が少ない。Weyerhaeuser事件では、略奪的高価格購入において、生産品のコスト基準を用いている。不当高価購入の「高い価格」の基準を検討する上で参考ともなるが、事業者困難性が公正競争阻害性ともなっているため、必ずしも生産品のコスト基準を用いる必要はない。
また、私的独占としての略奪的高価購入について、生産品のコスト基準は意義があると考えられるが、原材料が生産品の価格の7割を占めるようなウェイヤーハウザー事件とは異なり、加工に高度な技術が必要で生産品の価格が原材料と比べ著しく高くなるような場合には、この生産品のコスト基準は上手く機能しないと考えられる。
渕川和彦「米国反トラスト法における略奪的高価購入(Predatory Bidding)規制」法学政治学論究86号35-67頁(2010)
<要約>
従来、我が国の独占禁止法(以下、「独禁法」)では、買手の行為に対して必ずしも積極的に規制を行ってこなかった。しかしながら、平成17年の独禁法改正において購入カルテルについても課徴金が課されることとなり、買手の行為に対する規制への関心が高まりつつある。しかしながら、我が国独禁法では、支配型・排除型を問わず、買手が私的独占を行った場合に課徴金の対象とならない点を問題として指摘することができる。
この点、米国では、原材料となる原木の買占めによる競合会社の排除が問題となった、2007年のWeyerhaeuser事件がある。連邦最高裁は、売手側の独占と買手側の独占との理論上の類似性を指摘し、略奪的価格設定のBrooke判決の2段階の基準を略奪的高価購入に対しても応用して判決を下した。連邦最高裁は、まず、①略奪者である買手の高価購入により生じた生産品のコストが、生産品の販売で生じた収益を上回ることを生じ、次に、②独占力の行使を通じて、原材料価格を吊り上げた際に被った損失を埋め合わせる、合理的な見通しを有することを証明しなければならないとした。
Weyerhaeuser事件では、生産品である製材のコストを基準とした。本件で問題となった生産品の製材は、原材料が7割の価格を占めるという特殊な事情もあった。生産品の価格のコスト基準については、傾聴に値するが、慎重な対応が必要と考える。Weyerhaeuser事件は、買手独占が競争法上の問題となることを明らかにし、Brooke判決基準を略奪的高価格購入に適用している点で意義がある。しかしながら、Brooke判決基準同様、原告に厳しい立証責任を課しており、また、生産品のコスト基準、違法性判断基準の不統一など課題が多い。
Weyerhaeuser事件のような略奪的高価購入の問題は、我が国独禁法では、一般指定7項の不当高価購入、あるいは独禁法2条5項の私的独占に該当する行為と考えられる。特に、一般指定7項の不当高価購入については、運用例がなく、学説上も議論の蓄積が少ない。Weyerhaeuser事件では、略奪的高価格購入において、生産品のコスト基準を用いている。不当高価購入の「高い価格」の基準を検討する上で参考ともなるが、事業者困難性が公正競争阻害性ともなっているため、必ずしも生産品のコスト基準を用いる必要はない。
また、私的独占としての略奪的高価購入について、生産品のコスト基準は意義があると考えられるが、原材料が生産品の価格の7割を占めるようなウェイヤーハウザー事件とは異なり、加工に高度な技術が必要で生産品の価格が原材料と比べ著しく高くなるような場合には、この生産品のコスト基準は上手く機能しないと考えられる。
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