2009年12月9日水曜日

公取委の「審判制度」の行方

公取委の審判制度の改正について議論が動き始めました。従前の事前審判制度に戻すというのが本来であれば望ましいと思いますが、残念ながら、従前の事前審判制度にも戻さず、現行の事後審判制度から改正するというのが平成21年独占禁止法改正の本法附則によって決まっています。
12月7日の報道によれば、東京地裁が一元的に取消の訴えを受けることになりますが、米国が連邦取引委員会(FTC)の決定に不服がある場合は連邦巡回区控訴裁判所に訴えが及ぶことと比較すると、日本の公取委の役割はかなり後退すると言わざるを得ません。是非、比較法的な見地から、公正な審判をどのように行うかについての議論をしていただきたいものです。

「公取委の「審判制度」廃止へ 政府近く正式発表」(2009年12月7日asahi.com)
「談合やカルテルなどで処分を受けた企業が不服を申し立てる公正取引委員会の「審判制度」を廃止する最終方針を政府が固めた。近く正式発表する。「処分を決めた公取委が自ら審判する制度は不公平」と廃止を求めてきた経済界の訴えに、鳩山政権が発足後速やかに同調した形だ。政府は、来年の通常国会での独占禁止法改正を目指す。
 審判制度は、課徴金納付命令などの処分を出された企業が不服を申し立てる制度。現行では、審判の判断にも納得できなければ、処分取り消しを求めて高裁に提訴する。審判が廃止されれば、当初から地裁に訴えを起こす仕組みになる。裁判所には専門部署を設ける方向で法務省などと検討している。
 公取委の審判で、処分の是非を検討するのは、公取委職員や裁判官、弁護士らでつくる審判官で、裁判の判決にあたる審決の案を作る。最終判断は、公取委の委員長と4委員が合議で下す。
 これに対し、経済界は「『検察官』と『裁判官』を兼ねる制度だ」と批判。審判で不服を聴いたうえで処分を決めていた手続きを、05年の法改正で、処分後に審判を開く事後制度に変えたため、批判はさらに強まった。
 これら批判を受け、公取委は昨年、違法性が明らかな談合やカルテルは当初から裁判所で争い、企業合併の審査や私的独占などは事前審判に戻す折衷案を検討していた。
 しかし、今春の法改正の審議では、与党だった自民党内で調整がつかず、議論は先送り。当時野党だった民主党は、経済界の要望を受けた形で審判の廃止を強く主張。総選挙前に出した政策集にも廃止を盛り込んでいた。
 9月の新政権発足後、審判を巡る議論は一気に加速した。以前から廃止を求めていた日本経済団体連合会(経団連)は10月20日に改めて「公正、公平な解決のためには、審判を廃止し、直接裁判所で争える仕組みが必要」との提言を公表。半月後の11月5日、近藤洋介経済産業省政務官が廃止方針を表明した。
検事として公取委に出向経験のある郷原信郎弁護士は「裁判所に専門性の高い経済の事案に対応する態勢が整っているのか疑問だ。一部を事前審判に戻す選択肢もある」と指摘する。独禁法に詳しい根岸哲・甲南大法科大学院教授(経済法)は「自ら審判をする権限が無くなれば、公取委の弱体化につながる恐れがある」として、法改正に向けてはさらに論議が必要との考えを示している。(小島寛明、富田祥広) 」

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